当院のESD（内視鏡的粘膜下層剥離術）件数は、県内でもトップクラスの治療件数（2021年…221件）を誇っています。
そこで、さらなる専門性を追求すべく、2022年3月より、ESD専門外来を開設及び運用開始する運びとなりました。
早期がんに対してESDを行うことで、手術をすることなく、内視鏡治療でがんの根治が期待できます。
このESD外来は、全消化管（食道・胃・十二指腸・大腸）の早期がんを対象としております。治療前に、拡大内視鏡観察による精密な範囲診断及び腫瘍の組織型（顔つき）の判別を行います。
さらに超音波内視鏡検査も同時に行い、腫瘍の深さも正確に把握してから治療に臨みます。術前診察時に、患者さんの病変を考慮した上で、切除時間や腫瘍の病態など事前に予想される事をお話します。

具体的な治療方法

【入院から退院までの流れ】

●入院日数…7日前後の入院（治療日の前日午後に入院）

●治療…鎮静剤を使用（呼吸は止めません）。鎮静剤を使用することにより、患者さんには眠っていただく
　　　ため、苦痛なく治療を受けていただけます。

● 処置時間… 難易度により異なり、10分程度〜2時間と様々です。

●術後の痛み…入院中および退院後の痛みは、ほとんどありません。

●退院後…入院前とほぼ同様の生活を送ることが可能です。


【ESDの具体的な方法】


�@ がんを内視鏡で観察します。
�A がんの周囲に電気メスでマーキングを行います。
�Bマーキングの外側を電気メスで全周切開します。
�Cがんの下に潜り込み、電気メスで剥離していきます。
�D病変を内視鏡で回収します。
�E剥離面の血管を処理し、術後出血の予防をして終了します。

【ESDの合併症】
出血や穿孔（消化管の壁に穴が開くこと）が挙げられます。
入院中の1週間以内に出血する可能性があります。突然の吐血や黒色便・血便、貧血の進行で出血を疑います。出血した際は、内視鏡で止血術を行います。切除範囲が広かったり、抗血栓薬（血液をサラサラにする薬）を内服されている方に多いとされています。
術中あるいは術後に治療部位に穴が開く可能性があります。小さい穿孔であれば、内視鏡でクリップを用いて創部閉鎖を行います。大きな穿孔となった場合は手術が必要となります。当院における穿孔の発症は非常に稀で、約0・7 ％ です（2020〜2021年）。
病変の難易度に合わせて、治療テクニックや使用する処置具（当科では、様々な処置具を取り揃えています）を変えながら、合併症の発症を最小限に抑えられるよう工夫しております。

【退院後の流れ】
退院してから1ヶ月後に治療した部位の確認（治癒過程の評価）のため、内視鏡検査をしていただきます。
検査後、切除した病変の顕微鏡写真やその結果を基に病理の結果（根治の有無や腫瘍の顔つき、今後の異時性転移のリスクなど）を詳細にご説明いたします。
この病理診断は、病気を見極める屋台骨であり、病気を治す又は治した根拠となります。

おわりに

　
消化器内科・内視鏡室一同、より高水準の医療を提供することを使命とし、実践に努めて参ります。
ご不明な点などございましたら、お気軽に受診時にお聞きください。

受診をご希望される方へ

内視鏡をしていただいた医院・病院の先生にご相談の上、紹介状を記載していただき、当科をご予
約ください。

消化器内科（直通）
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