患者さんの負担をより少なく、より高精度な診断・治療が実現します

この度、竹田綜合病院では最新鋭の64列マルチスライスCT（GE社製　LightSpeed　VCT）を導入いたしました（12月中旬より本稼働）。この64列CTを設置している施設は国内でもまだ少なく、GE社製としては東北では初めての導入です。

竹田綜合病院は、一昨年8列、昨年11月には16列マルチスライスCTを福島県内の他の医療機関に先駆けて導入しました。16列導入からわずか一年ですが、最近のCT装置の進歩は急速であり、さらなる医療・診断の質の向上、患者の負担軽減を目指して、最新鋭64列マルチスライスCTの導入に踏み切りました。

このCTは0.625mmという非常に細かいスライスデータを64列同時収集が可能で、非常に高画質な画像を、きわめて短時間に得ることができます。検査時間の短縮と被曝線量 の低減をはかることができ体内の情報をより詳細な画像として表し、診断・治療に役立てることが可能となりました。

従来のCTと違い、マルチスライスCTでは一度に複数のスライスを撮影できます。4列、8列、16列と多列化が進むにつれて、一回に撮影できる範囲は広がり、息を止める時間も短くなってきました。最近登場した16列CT以降では広い範囲でもほぼ一回の息止めで検査が可能です。64列CTはその最高機種にあたり、例えば頭部から下肢にかけての広範囲を検査したとしても、最速で十数秒の撮影で終わってしまいます。胸部のCT撮影であればわずか4秒の息止めで検査が終了します。

マルチスライスCT検査の最大の利点は、専用のコンピュータを用いて画像データ処理を行うことにより、様々な画像が作成できることにあります。再構成画像では従来の輪切りの横断像だけではなく、縦や斜め、あらゆる角度の画像作成が可能ですが、今回導入されたCTの場合は、一回転0.35秒の高速スキャンで最小0.625mmスライスデータを64列一度に検出できます。そのため画像の分解能率が高く、横断像と全く同じ解像度でさまざまな方向から観察することができ、細かな判断をするうえで有用なものとなっています。

造影剤を使用した検査では、上記の冠動脈の検査をはじめ、大動脈、腹部、頭頸部、下肢等の全身の血管に対しても血管造影検査と同等あるいはそれ以上の情報を得ることができます（図１）。

図1：腹部大動脈瘤　大動脈に屈曲・蛇行が観察され壁に石灰化が観察されます。動脈の拡張（動脈瘤）が認められ（矢印）、動脈硬化性変化が一目瞭然です。胸〜骨盤まで約6秒間で撮影可能です。

三次元画像は血管・心臓の検査以外にも骨・関節など整形外科領域でも広く利用され、立体的な構造を理解するのに役立っています（図2）。

図２：矢状断、冠状断再構成画像で、骨折の状態が詳細に観察できます。

さらには消化管造影検査・内視鏡検査に類似した画像を作成することも可能です（図3）。

撮影時は、X線量を自動的に細かく調節し適切な電流制御を行う機能が働き、また新たなダイオード開発、ノイズの低減などにより、高画質でありながら被曝を低減できる最新の技術が搭載されている装置です。マルチスライスCTの様々な最新技術を活かし、一度の検査で最大限の情報を引き出すよう努力することで、患者の負担を減らしよりよい医療の実現が期待できます。

図３：S状結腸に分葉状の隆起性腫瘍を認めます（矢印）。前処置を行うことで、実際の内視鏡所見に匹敵する情報を得ることが可能となる場合もあります。

64列CTでは狭い範囲をより細かく撮影し、高精細な画像を得ることも可能です。その代表例が心臓（冠動脈）CT検査です（図4-1・4-2・4-3・図5）。ある程度の条件が揃えば従来の心臓カテーテル検査と同等の診断が可能になっています。

当院では従来16列の検査を行っておりましたが、息止め時間が20秒前後と比較的長く、高齢の方や肺に疾患をお持ちの方にとっては厳しい検査とならざるを得ませんでした。この64列VCTでは、息止め時間が5秒前後ですので、冠動脈CT検査をより多くの方にうけていただくことができるようになりました。また冠動脈CT検査では、造影剤の静脈注射が必要ですが、VCTでは検査自体が早く終わってしまいますので、造影剤の量を軽減することができるようになり、患者さんの負担軽減にもつながります。